けた。
『克《よ》く改めて見て呉れ給へ――まあ有る積りだがね。』
『それは難有う。』と丑松は袋入りの銀貨取混ぜて受取つて、『確に。して見ると今日は二十八日かねえ。僕はまた二十七日だとばかり思つて居た。』
『はゝゝゝゝ、月給取が日を忘れるやうぢやあ仕様が無い。』と銀之助は反返《そりかへ》つて笑つた。
『全く、僕は茫然《ぼんやり》して居た。』と丑松は自分で自分を励ますやうにして、『今月は君、小だらう。二十九、三十と、十一月も最早《もう》二日しか無いね。あゝ今年も僅かに成つたなあ。考へて見ると、うか/\して一年暮して了つた――まあ、僕なぞは何《なんに》も為なかつた。』
『誰だつて左様《さう》さ。』と銀之助も熱心に。
『君は好いよ。君はこれから農科大学の方へ行つて、自分の好きな研究が自由にやれるんだから。』
『時に、僕の送別会もね、生徒の方から明日にしたいと言出したが――』
『明日に?』
『しかし、君も斯うして寝て居るやうぢやあ――』
『なあに、最早|愈《なほ》つたんだよ。明日は是非出掛ける。』
『はゝゝゝゝ、瀬川君の病気は不良《わる》くなるのも早いし、快《よ》くなるのも早い。まあ大病人のやう
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