には又|茫然《ぼんやり》と懐手して人の談話《はなし》を聞いて居るのもあつた。主婦《かみさん》は家《うち》の内でも手拭を冠り、藍染真綿を亀の甲のやうに着て、茶を出すやら、座蒲団を勧めるやら、金米糖《こんぺいたう》は古い皿に入れて款待《もてな》した。
丁度そこへ二台の人力車《くるま》が停つた。矢張《やはり》斯の霙《みぞれ》を衝《つ》いて、便船に後《おく》れまいと急いで来た客らしい。人々の視線は皆な其方に集つた。車夫はまるで濡鼠、酒代《さかて》が好いかして威勢よく、先づ雨被《あまよけ》を取除《とりはづ》して、それから手荷物のかず/\を茶屋の内へと持運ぶ。つゞいて客もあらはれた。
(二)
丑松が驚いたのは無理もなかつた。それは高柳の一行であつた。往《ゆ》きに一緒に成つて、帰りにも亦《ま》た斯《こ》の通り一緒に成るとは――しかも、同じ川舟を待合はせるとは。それに往きには高柳一人であつたのが、帰りには若い細君らしい女と二人連。女は、薄色縮緬《うすいろちりめん》のお高祖《こそ》を眉深《まぶか》に冠つたまゝ、丑松の腰掛けて居る側を通り過ぎた。新しい艶のある吾妻袍衣《あづまコート》
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