過ぎるからねえ。』
『では、先生は奈何《どう》なさる御積りなんですか。』
『奈何するとは?』
『黙つて帰ることが出来ないと仰《おつしや》ると――』
『ナニ、君、僅かに打撃を加へる迄《まで》のことさ。はゝゝゝゝ。なにしろ先方《さき》には六左衛門といふ金主が附いたのだから、いづれ買収も為るだらうし、壮士的な運動も遣《や》るだらう。そこへ行くと、是方《こつち》は草鞋《わらぢ》一足、舌一枚――おもしろい、おもしろい、敵はたゞ金の力より外に頼りに為るものが無いのだからおもしろい。はゝゝゝゝ。はゝゝゝゝ。』
『しかし、うまく行つて呉れると好いですがなあ――』
『はゝゝゝゝ。はゝゝゝゝ。』
 斯《か》ういふ談話《はなし》をして行くうちに、二人は上田|停車場《ステーション》に着いた。
 上野行の上り汽車が是処《こゝ》を通る迄には未だ少許《すこし》間が有つた。多くの旅客は既に斯の待合室に満ち溢《あふ》れて居た。細君も直に一緒になつて、三人して弁護士を待受けた。蓮太郎は巻煙草を取出して、丑松に勧め、自分もまた火を点《つ》けて、其を燻《ふか》し/\何を言出すかと思ふと、『いや、信州といふところは余程面白いと
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