《よ》く父に連れられて、往つたり来たりしたところである。牛小屋のある高原の上へ出る前に、二人はいくつか小山を越えた。
(五)
谷を下ると其処がもう番小屋で、人々は狭い部屋の内に集つて居た。灯は明々《あか/\》と壁を泄《も》れ、木魚《もくぎよ》の音も山の空気に響き渡つて、流れ下る細谷川の私語《さゝやき》に交つて、一層の寂しさあはれさを添へる。家の構造《つくり》は、唯|雨露《あめつゆ》を凌ぐといふばかりに、葺《ふ》きもし囲ひもしてある一軒屋。たまさか殿城山の間道を越えて鹿沢《かざは》温泉へ通ふ旅人が立寄るより外には、訪《と》ふ人も絶えて無いやうな世離れたところ。炭焼、山番、それから斯の牛飼の生活――いづれも荒くれた山住の光景《ありさま》である。丑松は提灯《ちやうちん》を吹消して、叔父と一緒に小屋の戸を開けて入つた。
定津院の長老、世話人と言つて姫子沢の組合、其他父が生前懇意にした農家の男女《をとこをんな》――それらの人々から丑松は親切な弔辞《くやみ》を受けた。仏前の燈明は線香の烟《けぶり》に交る夜の空気を照らして、何となく部屋の内も混雑して居るやうに見える。父の遺骸《
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