るのが羨ましくも思はれた。
其時になつて丑松も明《あきらか》に自分の位置を認めることが出来た。敬慕も、同情も、すべて彼の先輩に対して起る心の中のやるせなさは――自分も亦た同じやうに、『穢多である』といふ切ない事実から湧上るので。其秘密を蔵《かく》して居る以上は、仮令《たとひ》口の酸くなるほど他の事を話したところで、自分の真情が先輩の胸に徹《こた》へる時は無いのである。無理もない。あゝ、あゝ、其を告白《うちあ》けて了つたなら、奈何《どんな》に是胸の重荷が軽くなるであらう。奈何に先輩は驚いて、自分の手を執つて、『君も左様《さう》か』と喜んで呉れるであらう。奈何に二人の心と心とがハタと顔を合せて、互ひに同じ運命を憐むといふ其深い交際《まじはり》に入るであらう。
左様《さう》だ――せめて彼の先輩だけには話さう。斯う考へて、丑松は楽しい再会の日を想像して見た。
(三)
田中の停車場《ステーション》へ着いた頃は日暮に近かつた。根津村へ行かうとするものは、こゝで下りて、一里あまり小県《ちひさがた》の傾斜を上らなければならない。
丑松が汽車から下りた時、高柳も矢張同じやうに下
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