い。強い意志を刻んだやうな其大な額――いよ/\高く隆起《とびだ》した其頬の骨――殊に其眼は一種の神経質な光を帯びて、悲壮な精神《こゝろ》の内部《なか》を明白《あり/\》と映して見せた。時として顔の色沢《いろつや》なぞを好く見せるのは彼《あ》の病気の習ひ、あるひは其故《そのせゐ》かとも思はれるが、まあ想像したと見たとは大違ひで、血を吐く程の苦痛《くるしみ》をする重い病人のやうには受取れなかつた。早速丑松は其事を言出して、『実は新聞で見ました』から、『東京の御宅へ宛てゝ手紙を上げました』まで、真実を顔に表して話した。
『へえ、新聞に其様《そん》なことが出て居ましたか。』と蓮太郎は微笑《ほゝゑ》んで、『聞違へでせう――不良《わる》かつたといふのを、今|不良《わる》いといふ風に、聞違へて書いたんでせう。よく新聞には左様《さう》いふ間違ひが出て来ますよ。まあ御覧の通り、斯うして旅行が出来る位ですから安心して下さい。誰がまた其様《そん》な大袈裟《おほげさ》なことを書いたか――はゝゝゝゝ。』
 聞いて見ると、蓮太郎は赤倉の温泉へ身体を養ひに行つて、今其|帰途《かへりみち》であるとのこと。其時|同伴《
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