に我輩も意外だつた、君の父上《おとつ》さんが亡《な》くならうとは。何卒《どうか》、まあ、彼方《あちら》の御用も済み、忌服《きぶく》でも明けることになつたら、また学校の為に十分御尽力を願ひませう。吾儕《われ/\》の事業《しごと》が是丈《これだけ》に揚つて来たのも、一つは君の御骨折からだ。斯うして君が居て下さるんで、奈何《どんな》にか我輩も心強いか知れない。此頃《こなひだ》も或処で君の評判を聞いて来たが、何だか斯う我輩は自分を褒められたやうな心地《こゝろもち》がした。実際、我輩は君を頼りにして居るのだから。』と言つて気を変へて、『それにしても、出掛けるとなると、思つたよりは要《かゝ》るものだ。少許位《すこしぐらゐ》は持合せも有ますから、立替へて上げても可《いゝ》のですが、どうです少許《すこし》御持ちなさらんか。もし御入用《おいりよう》なら遠慮なく言つて下さい。足りないと、また困りますよ。』
 と言ふ校長の言葉はいかにも巧みであつた。しかし丑松の耳には唯わざとらしく聞えたのである。
『瀬川君、それでは届を忘れずに出して行つて下さい――何も規則ですから。』
 斯う校長は添加《つけた》して言つた
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