先生、瀬川丑松より』と認《したゝ》め終つた時は、深く/\良心《こゝろ》を偽《いつは》るやうな気がした。筆を投《なげう》つて、嘆息して、復《ま》た冷い寝床に潜り込んだが、少許《すこし》とろ/\としたかと思ふと、直に恐しい夢ばかり見つゞけたのである。
翌朝のことであつた。蓮華寺の庄馬鹿が学校へやつて来て、是非丑松に逢ひたいと言ふ。『何の用か』を小使に言はせると、『御目に懸つて御渡ししたいものが御座《ござい》ます』とか。出て行つて玄関のところで逢へば、庄馬鹿は一通の電報を手渡しした。不取敢《とりあへず》開封して読下して見ると、片仮名の文字も簡短に、父の死去したといふ報知《しらせ》が書いてあつた。突然のことに驚いて了つて、半信半疑で繰返した。確かに死去の報知には相違なかつた。発信人は根津の叔父。『直ぐ帰れ』としてある。
『それはどうも飛んだことで、嘸《さぞ》御力落しで御座ませう――はい、早速帰りまして、奥様にも申上げまするで御座ます。』
斯《か》う庄馬鹿が言つた。小児《こども》のやうに死を畏れるといふ様子は、其|愚《おろか》しい目付に顕《あら》はれるのであつた。
丑松の父といふは、日頃極
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