\に想像して見て、終《しまひ》には恐怖《おそれ》と疑心《うたがひ》とで夢中になつて、『阿爺《おとつ》さん、阿爺さん。』と自分の方から目的《あてど》もなく呼び返した。
『やあ、君は其処に居たのか。』
と声を掛けて近《ちかづ》いたのは銀之助。つゞいて敬之進も。二人はしきりに手提洋燈《てさげランプ》をさしつけて、先づ丑松の顔を調べ、身の周囲《まはり》を調べ、それから闇を窺《うかゞ》ふやうにして見て、さて丑松からまた/\父の呼声のしたことを聞取つた。
『土屋君、それ見たまへ。』
敬之進は寒さと恐怖《おそれ》とで慄へ乍ら言つた。銀之助は笑つて、
『どうしても其様《そん》なことは理窟に合はん。必定《きつと》神経の故《せゐ》だ。一体、瀬川君は妙に猜疑深《うたがひぶか》く成つた。だから其様《そん》な下らないものが耳に聞えるんだ。』
『左様《さう》かなあ、神経の故《せゐ》かなあ。』斯う丑松は反省するやうな調子で言つた。
『だつて君、考へて見たまへ。形の無いところに形が見えたり、声の無いところに声が聞えたりするなんて、それそこが君の猜疑深《うたがひぶか》く成つた証拠さ。声も、形も、其は皆な君が自分の疑
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