らく》は一層先輩の薄命を冥想《めいさう》させる種となつた。

       (三)

 敬之進の為に開いた茶話会は十一時頃からあつた。其日の朝、蓮華寺を出る時、丑松は廊下のところでお志保に逢つて、この不幸な父親を思出したが、斯うして会場の正面に座《す》ゑられた敬之進を見ると、今度は反対《あべこべ》に彼の古壁に倚凭つた娘のことを思出したのである。敬之進の挨拶は長い身の上の述懐であつた。憐むといふ心があればこそ、丑松ばかりは首を垂れて聞いて居たやうなものゝ、さもなくて、誰が老《おい》の繰言《くりごと》なぞに耳を傾けよう。
 茶話会の済んだ後のことであつた。丁度|庭球《テニス》の遊戯《あそび》を為るために出て行かうとする文平を呼留めて、一緒に校長はある室の戸を開けて入つた。差向ひに椅子に腰掛けたは運動場近くにある窓のところで、庭球《テニス》狂《きちがひ》の銀之助なぞが呼び騒ぐ声も、玻璃《ガラス》に響いて面白さうに聞えたのである。
『まあ、勝野君、左様《さう》運動にばかり夢中にならないで、すこし話したまへ。』と校長は忸々敷《なれ/\しく》、『時に、奈何《どう》でした、今日の演説は?』
『先生の
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