てよこしました。
二人の兄弟は榎木の実ばかりでなく、橿鳥の美しい羽を拾い、おまけにその大きな榎木の下で、「丁度好い時」までも覚えて帰って来ました。
二 釣りの話
ある日、お爺《じい》さんは二人の兄弟に釣りの道具を造って呉《く》れると言いました。
いかにお爺さんでも釣りの道具は、むずかしかろう、と二人の子供がそう思って見て居《い》ました。この兄弟の家《うち》の周囲《まわり》には釣竿《つりざお》一本売る店がありませんでしたから。
お爺さんは何処《どこ》からか釣針を探《さが》して来ました。それから細い竹を切って来まして、それで二本の釣竿を造りました。
「針と竿が出来ました。今度は糸の番です。」とお爺さんは言って、栗《くり》の木に住む栗虫から糸を取りました。丁度お蚕《かいこ》さまのように、その栗虫からも白い糸が取れるのです。お爺さんは栗虫から取れた糸を酢に浸《つ》けまして、それを長く引延しました。その糸が日に乾《かわ》いて堅くなる頃《ころ》には、兄弟の子供の力で引いても切れないほど丈夫で立派なものが出来上りました。
「さあ、釣りの道具が揃《そろ》いました。」と言って兄弟
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