はく》すでに折れ碎け
徑《みち》を川邊にもとむれば
野草は深く荒れにけり
菊は心を驚かし
蘭は思を傷ましむ
高きに登り草を藉き
惆悵として眺むれば
檜原《ひばら》に迷ふ雲落ちて
涙流れてかぎりなし
去《い》ね/\かゝる古里《ふるさと》は
ふたゝび言ふに足らじかし
あゝよしさらばけふよりは
日行き風吹き彩雲《あやぐも》の
あやにたなびくかなたをも
白波高く八百潮の
湧き立ちさわぐかなたをも
かしこの岡もこの山も
いづれ心の宿とせば
しげれる谷の野葡萄に
秋のみのりはとるがまゝ
深き林の黄葉《もみぢば》に
秋の光は履《ふ》むがまゝ
響りん/\音りん/\
うちふりうちふる鈴高く
馬は首《かうべ》をめぐらして
雲に嘶きいさむとき
かへりみすれば古里《ふるさと》の
檜原《ひばら》は目にも見えにけるかな
[#改ページ]
翼なければ
羽翼《つばさ》なければ繋がれて
朽ちはつべしとかねてしる
光なければ埋もれて
老いゆくべしとかねてしる
知る人もなき山蔭に
朽ちゆくことを厭はねば
牛飼ふ野邊の寂しさを
かくれがとこそ頼むなれ
埋《う》もるゝ花もありやとて
獨り戸に倚り眺むれば
ゆふべ空
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