《しらなみ》の上なれば
君安かれと祈るかな

海とはいへどひねもすは
皐月《さつき》の野邊と眺め見よ
波とはいへど夜もすがら
緑の草と思ひ寢よ

もし海怒り狂ひなば
われ是岸《このきし》に仆れ伏し
いといと深き歎息《ためいき》に
其嵐をぞなだむべき

樂しき初《はじめ》憶《おも》ふ毎
哀《かな》しき終《をはり》堪へがたし
ふたゝびみたびめぐり逢ふ
天《あま》つ惠みはありやなしや

あゝ緑葉の嘆《なげき》をぞ
今は海にも思ひ知る
破れて胸は紅き血の
流るゝがごと滴るがごと
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 椰子の實


名も知らぬ遠き島より
流れ寄る椰子の實一つ

故郷《ふるさと》の岸を離れて
汝《なれ》はそも波に幾月《いくつき》

舊《もと》の樹は生ひや茂れる
枝はなほ影をやなせる

われもまた渚を枕
孤身《ひとりみ》の浮寢の旅ぞ

實をとりて胸にあつれば
新《あらた》なり流離の憂《うれひ》

海の日の沈むを見れば
激《たぎ》り落つ異郷の涙

思ひやる八重の汐々《しほ/″\》
いづれの日にか國へ歸らむ
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 浦島


浦島の子とぞいふなる
遊ぶべく海邊に出でて
釣すべく岩に上りて
長き
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