垣根には
露草の花さきにけり
さまよひくれば夕雲や
これぞこひしき門邊なる
瓦の屋根に烏啼き
烏歸りて日は暮れぬ
おとづれもせず去《い》にもせで
螢と共にこゝをあちこち
[#改ページ]
枝うちかはす梅と梅
枝うちかはす梅と梅
梅の葉かげにそのむかし
鷄《とり》は鷄《とり》とし並び食ひ
われは君とし遊びてき
空風吹けば雲離れ
別れいざよふ西東
青葉は枝に契るとも
緑は永くとゞまらじ
水去り歸る手をのべて
誰れか流れをとゞむべき
行くにまかせよ嗚呼さらば
また相見むと願ひしか
遠く別れてかぞふれば
かさねて長き秋の夢
願ひはあれど陶磁《すゑもの》の
くだけて時を傷《いた》みけり
わが髮長く生ひいでて
額の汗を覆ふとも
甲斐なく珠《たま》を抱きては
罪多かりし草枕
雲に浮びて立ちかへり
都の夏にきて見れば
むかしながらのみどり葉は
蔭いや深くなれるかな
わかれを思ひ逢瀬をば
君とし今やかたらふに
二人すわりし青草は
熱き涙にぬれにけり
[#改ページ]
めぐり逢ふ君やいくたび
めぐり逢ふ君やいくたび
あぢきなき夜を日にかへす
吾命|暗《やみ》の谷間も
君あれば戀の
前へ
次へ
全100ページ中83ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング