亡き人の
語《かた》らふごとく
見ゆるかな
あな面影の
わが胸に
活《い》きて微笑《ほゝゑ》む
たのしさは
やがてつとめを
いそしみて
かなしみに勝つ
生命《いのち》なり
汗《あせ》はこひしき
涙なり
勞働《つとめ》は活ける
思ひなり
いでやかひなの
折るゝまで
けふのつとめを
いそしまむ
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新潮
一
我《われ》あげまきのむかしより
潮《うしほ》の音《おと》を聞き慣れて
磯邊に遊ぶあさゆふべ
海人《あま》の舟路を慕ひしが
やがて空《むな》しき其夢は
身の生業《なりはひ》となりにけり
七月夏の海《うみ》の香《か》の
海藻《あまも》に匂ふ夕まぐれ
兄もろともに舟《ふね》浮《う》けて
力をふるふ水馴棹《みなれざを》
いづれ舟出《ふなで》はいさましく
波間に響く櫂の歌
夕潮《ゆふしほ》青き海原《うなばら》に
すなどりすべく漕ぎくれば
卷《ま》きては開く波の上の
鴎の夢も冷やかに
浮び流るゝ海草《うみぐさ》の
目にも幽《かす》かに見ゆるかな
まなこをあげて落つる日の
きらめくかたを眺むるに
羽袖うちふる鶻
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