とこそ
恨《うら》むなれ
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寶はあはれ碎けけり
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老いたる鍛冶のうたへる
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寶《たから》はあはれ
碎《くだ》けけり
さなり愛兒《まなご》は
うせにけり
なにをかたみと
ながめつゝ
こひしき時を
忍ぶべき
ありし昔の
香ににほふ
薄《うす》はなぞめの
帶よけむ
麗《うる》はしかりし
黒髮の
かざしの紅《あか》き
珠《たま》よけむ
帶はあれども
老《おい》が身に
ひきまとふべき
すべもなし
珠《たま》はあれども
白髮《しらかみ》に
うちかざすべき
すべもなし
ひとりやさしき
面影《おもかげ》は
眼《まなこ》の底に
とゞまりて
あしたにもまた
ゆふべにも
われにともなふ
おもひあり
あゝたへがたき
くるしみに
おとろへはてつ
爐前《ほどまへ》に
仆《たふ》れかなしむ
をりをりは
面影さへぞ
力なき
われ中槌《なかつち》を
うちふるひ
ほのほの前に
はげめばや
胸にうつりし
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