隼《はやぶさ》は
彩《あや》なす雲を舞ひ出でて
翅《つばさ》の塵《ちり》を拂ひつゝ
物にかゝはる風情《ふぜい》なし
飄々として鳥を吹く
風の力もなにかせむ
勢《いきほひ》龍《たつ》の行くごとく
羽音《はおと》を聞けば葛城の
そつ彦むかし引きならす
眞弓《まゆみ》の弦《つる》の響あり
希望《のぞみ》すぐれし鶻隼よ
せめて舟路のしるべせよ
げにその高き荒魂《あらだま》は
敵《てき》に赴《おもむ》く白馬《しろうま》の
白き鬣《たてがみ》うちふるひ
風を破《やぶ》るにまさるかな
海面《うみづら》見ればかげ動く
深紫の雲の色
はや暮れて行く天際《あまぎは》に
行くへや遠き鶻隼の
もろ羽《は》は彩《あや》にうつろひて
黄金《こがね》の波にたゞよひぬ
朝《あした》夕《ゆふべ》を刻《きざ》みてし
天の柱の影暗く
雲の帳《とばり》もひとたびは
輝きかへる高御座《たかみくら》
西に傾く夏の日は
遠く光彩《ひかり》を沈めけり
見ようるはしの夜《よる》の空《そら》
見ようるはしの空の星
北斗の清《きよ》き影《かげ》冱《さ》えて
望みをさそふ天の花
とはの宿りも舟人《ふなびと》の
光を仰ぐためしかな
前へ
次へ
全100ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング