ても見まし誰《た》がために
よそほひありく夫鳥《つまどり》よ
妻《つま》守《も》るためのかざりにと
いひたげなるぞいぢらしき
畫にこそかけれ花鳥《はなとり》の
それにも通ふ一つがひ
霜に侘寢の朝ぼらけ
雨に入日の夕まぐれ
空に一つの明星の
闇行く水に動くとき
日を迎へむと※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《にはとり》の
夜《よる》の使を音《ね》にぞ鳴く
露けき朝の明けて行く
空のながめを誰《たれ》か知る
燃ゆるがごとき紅《くれなゐ》の
雲のゆくへを誰《たれ》か知る
闇もこれより隣なる
聲ふりあげて鳴くときは
人の長眠《ねむり》のみなめざめ
夜《よ》は日に通ふ夢まくら
明けはなれたり夜《よ》はすでに
いざ妻鳥《つまどり》と巣を出でて
餌《ゑ》をあさらむと野に行けば
あなあやにくのものを見き
見しらぬ※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《とり》の音《ね》も高《たか》に
あしたの空に鳴き渡り
草かき分けて來《く》るはなぞ
妻戀ふらしや妻鳥《つまどり》を
ねたしや露に羽《はね》ぬれて
朝日にうつる影見れば
雄※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《をどり》に惜し
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