をとこの氣息《いき》のやはらかき
お夏の髮にかゝるとき
をとこの早きためいきの
霰《あられ》のごとくはしるとき
をとこの熱《あつ》き手の掌《ひら》の
お夏の手にも觸るゝとき
をとこの涙ながれいで
お夏の袖にかゝるとき
をとこの黒き目のいろの
お夏の胸に映《うつ》るとき
をとこの紅《あか》き口脣《くちびる》の
お夏の口にもゆるとき
人こそしらね嗚呼戀の
ふたりの身より流れいで
げにこがるれど慕へども
やむときもなき清十郎
[#改ページ]
※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]
花によりそふ※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《にはとり》の
夫《つま》よ妻鳥《めどり》よ燕子花
いづれあやめとわきがたく
さも似つかしき風情《ふぜい》あり
姿やさしき牝※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《めんどり》の
かたちを恥づるこゝろして
花に隱るゝありさまに
品かはりたる夫鳥《つまどり》や
雄々しくたけき雄※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《をんどり》の
とさかの色も艶《つや》にして
黄なる口嘴《くちばし》脚蹴爪《あしけづめ》
尾はしだり尾のながながし
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