り
戀の激波《おほなみ》たちさわぎ
夢むすぶべきひまもなし
闇き潮《うしほ》の驚きて
流れて歸るわだつみの
鳥の行衞も見えわかぬ
波にうきねのかもめどり
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流星
門《かど》にたち出でたゞひとり
人待ち顏のさみしさに
ゆふべの空をながむれば
雲の宿りも捨てはてて
何かこひしき人の世に
流れて落つる星一つ
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君と遊ばむ
君と遊ばむ夏の夜の
青葉の影の下すゞみ
短かき夢は結ばずも
せめてこよひは歌へかし
雲となりまた雨となる
晝の愁ひはたえずとも
星の光をかぞへ見よ
樂みのかず夜《よ》は盡きじ
夢かうつゝか天の川
星に假寢の織姫の
ひゞきもすみてこひわたる
梭の遠音を聞かめやも
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晝の夢
花橘の袖の香の
みめうるはしきをとめごは
眞晝《まひる》に夢を見てしより
さめて忘るゝ夜のならひ
白日《まひる》の夢のなぞもかく
忘れがたくはありけるものか
ゆめと知りせばなまなかに
さめざらましを世に出でて
うらわかぐさのうらわかみ
何をか夢の名殘ぞと
問はば答へむ目さめては
熱き涙のかわく間もなし
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四つの袖
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