ば
病《やまひ》に塵《ちり》に悲《かなしみ》に
死《し》にまでそしりねたまるゝ
かなしいかなやはたとせの
ことばの海のみなれ棹
磯にくだくる高潮《たかじほ》の
うれひの花とちりにけり
かなしいかなや人の世の
きづなも捨てて嘶けば
つきせぬ草に秋は來て
聲も悲しき天の馬
かなしいかなや音《ね》を遠み
流るゝ水の岸にさく
ひとつの花に照らされて
飄《ひるがへ》り行く一葉舟《ひとはぶね》
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秋思
秋は來《き》ぬ
秋は來ぬ
一葉《ひとは》は花は露ありて
風の來て彈《ひ》く琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり
秋は來ぬ
秋は來ぬ
おくれさきだつ秋草《あきぐさ》も
みな夕霜《ゆふじも》のおきどころ
笑ひの酒を悲みの
盃にこそつぐべけれ
秋は來ぬ
秋は來ぬ
くさきも紅葉《もみぢ》するものを
たれかは秋に醉はざらむ
智惠あり顏のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ
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初戀
まだあげ初《そ》めし前髮《まへがみ》の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛《はなぐし》の
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあ
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