と寒流とがあり、幾多の海潮とその逆潮とがあり、それから地震の波動があることもまた太平洋に似てゐる。あのブランデスの言葉の中に多くの反省すべきものがあると感ずるのは、おそらくわたし一人ではあるまいと思ふ。
曾て山陰地方への旅をして、城崎《きのさき》に近い瀬戸の日和山からも、香住の岡見公園からも、浦富、出雲浦等の海岸からも、あるひは石見《いはみ》の高角山《たかつのやま》からも日本海を望み見た。あの海岸に連なり續く高い岩壁は、大陸に面して立つ一大城廓に似てゐた。五ヶ月もの長さに亙るといふ冬季の日本海の活動から、その深い風雪と荒れ狂ふ怒濤とから、われわれの島國を守るやうな位置にあるのも、あの海岸の岩壁であつた。そこには到るところに湧き出づる温泉があり、金、銀、鐵、石炭、その他の鑛物を産する無盡藏の寶庫があつた。かのラフカヂオ・ハアンをして『これより麗しい洞窟は世界中殆んど想像し得ない』と言はしめたほど、空氣の如く明澄な海水を内に湛へ、また幾多の古い傳説が生れて來てゐる數限りもないやうな洞窟によつて飾られてゐるのもあの海岸であつた。この腰骨の強さこそ、大陸的なものをよく受けとめることの出來た
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