ケ子《やぶかうじ》、さては南天の白と紅。隱れたところにある庭の隅なぞに、それ等の草木の實を見つけるのはうれしい。寄贈を受ける諸雜誌の讀物の中から、木の實や草の實にも譬へたいやうな二三の言葉を拾つて見ようと思ふ。
『河』といふ同人雜誌には、以前毎號の卷頭にゲエテの言葉を譯載した。あれは拾つても/\盡せない美しい珠のやうなものばかりだつた。その中に『自然には進化はない、變化があるばかりだ』といふ意味の言葉なぞはいかにもゲエテのやうな人が到達した境地らしく思つた。
『三田文學』新年號を讀む。譯載してあつた論文の中に、ヘエゲルの表現によればとして、『矛盾なるものはすべての領域――從つて藝術的上層建築の領域に於いても亦――に於ける歴史的過程の指導原理である』との一句には心をひかれた。
佐藤春夫君が編輯する『古東多滿』を讀む。その中に、ロダンの彫刻の特質を一つの氾濫と言つてある高田博厚氏の文章にも心をひかれた。彼ロダンの價値はこの多樣の氾濫から一つの要素を要約したことにあると云ひ、併しこの失敗の多かつた氾濫は彼の性癖や好みから直接來たものではなくて、むしろ彼の飽くことのない『自然探求の努力の成果
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