Fのある縮れ髮、それから堅肥りのした精力的な體躯なぞは、今だにわたしの眼にある。
 こんなことをこゝに書きつけて見るのも他ではない。あの瀧田君の記憶と中央公論とはわたしには引きはなして考へられないものであり、今日わたしたちがこの集のために作品を持ち寄るにつけても、一片懷舊の情禁じがたく、同時に瀧田君が後繼者としてその仕事を幾倍かに擴げた嶋中君に望むことも多いからである。こゝろみに日露戰爭以後の文學に縁故の深かつた雜誌でわたしの胸に浮ぶものを數へて見ても、太陽、新小説、文藝界、文章世界、それから舊早稻田文學、藝苑、新古文林、帝國文學なぞ、いづれも今は過去のものとなつた。その中にあつて中央公論が創立以來五十周年を今日に迎へると聞くことは異數とせねばならぬ。この長い骨折はわたしたちとしても感謝していゝ。
 わたしは今、他の諸君と共に、こゝろざしばかりのものをこゝに持ち寄つた。又、これを機として、めづらしい作品集の出來たことを一つのよろこびともし、この集の内容にはかゝはりのないやうなこんな寢言をしるしつけて、序の言葉にかへたいと思ふ。

     木の實、草の實

 龍の髭の紫、千兩、萬兩、藪
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