B
 三義とは、この鳩の名である。上海の三義里街に因《ちな》むところから、その名がある。陸戰隊長植松少將の命名にかかるものであるとか。ことしの三月二十六日には、また西村君の誕生日がめぐつて來た。ちやうど亡き鳩を葬つた日の一周年にあたり、村の人が集まつてその塚に小さい碑を立てた。上海には縁故の深い重光公使の筆によつて、その碑に、『三義之塚』の文字が記された。すべてこれらのことは君からの消息にくはしい。
 時を感じては花に涙をそゝぎ、別れを惜しんでは鳥にも心を驚かすとやら。あの多感な詩人の言葉は君をもうなづかしめるであらうと信ずる。おそらく、その鳩塚に近い藤の根にも、またことしの春がめぐつて來よう。緑はそひ、生命は活きかへつて、その碑の上に再び他日の蔭を落すことであらう。これは小さなものの名殘、短かくはあるがおのづからな親善と愛との形見である。

     煙草

 私の煙草好きも久しいものだが、客でもあつて、この私に向つて、君はその敷嶋を一日に幾袋あけるかと聞かれる時はつらい。雇ひ入れた下女なぞが思ひの外な始末のいゝ人で、私の紙卷煙草の吸殼をひそかに貯へて置いて、藪入りの日にでもそれを里
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