を抱《だ》いて来《き》て、自分《じぶん》の部屋《へや》で遊《あそ》ばせるようになった。数《かぞ》え歳《どし》の二つにしかならない男《おとこ》の児《こ》であるが、あのきかない気《き》の光子《みつこ》さんに比《くら》べたら、これはまた何《なん》というおとなしいものだろう。金之助《きんのすけ》さんという名前《なまえ》からして男《おとこ》の子《こ》らしく、下《しも》ぶくれのしたその顔《かお》に笑《え》みの浮《う》かぶ時《とき》は、小《ちい》さな靨《えくぼ》があらわれて、愛《あい》らしかった。それに、この子《こ》の好《よ》いことには、袖子《そでこ》の言《い》うなりになった。どうしてあの少《すこ》しもじっとしていないで、どうかすると袖子《そでこ》の手《て》におえないことが多《おお》かった光子《みつこ》さんを遊《あそ》ばせるとは大違《おおちが》いだ。袖子《そでこ》は人形《にんぎょう》を抱《だ》くように金之助《きんのすけ》さんを抱《だ》いて、どこへでも好《す》きなところへ連《つ》れて行《ゆ》くことが出来《でき》た。自分《じぶん》の側《そば》に置《お》いて遊《あそ》ばせたければ、それも出来《でき》た。
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