さ》のように、生長《しとなり》ざかりの袖子《そでこ》は一層《いっそう》いきいきとした健康《けんこう》を恢復《かいふく》した。
「まあ、よかった。」
と言《い》って、あたりを見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《みまわ》した時《とき》の袖子《そでこ》は何《なに》がなしに悲《かな》しい思《おも》いに打《う》たれた。その悲《かな》しみは幼《おさな》い日《ひ》に別《わか》れを告《つ》げて行《ゆ》く悲《かな》しみであった。彼女《かのじょ》は最早《もはや》今《いま》までのような眼《め》でもって、近所《きんじょ》の子供達《こどもたち》を見《み》ることも出来《でき》なかった。あの光子《みつこ》さんなぞが黒《くろ》いふさふさした髪《かみ》の毛《け》を振《ふ》って、さも無邪気《むじゃき》に、家《いえ》のまわりを駆《か》け※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《まわ》っているのを見《み》ると、袖子《そでこ》は自分でも、もう一度《いちど》何《なに》も知《し》らずに眠《ねむ》ってみたいと思《おも》った。
男《おとこ》と女《おんな》の相違《そうい》が、今《いま》は明《あき》らかに袖子《そでこ》に見《
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