よ。そんなに自分《じぶん》が遅《おそ》かったものですからね。もっと早《はや》くあなたに話《はな》してあげると好《よ》かった。そのくせ私《わたし》は話《はな》そう話《はな》そうと思《おも》いながら、まだ袖子《そでこ》さんには早《はや》かろうと思《おも》って、今《いま》まで言《い》わずにあったんですよ……つい、自分《じぶん》が遅《おそ》かったものですからね……学校《がっこう》の体操《たいそう》やなんかは、その間《あいだ》、休《やす》んだ方《ほう》がいいんですよ。」
こんな話《はなし》を袖子《そでこ》にして聞《き》かせた。
不安《ふあん》やら、心配《しんぱい》やら、思《おも》い出《だ》したばかりでもきまりのわるく、顔《かお》の紅《あか》くなるような思《おも》いで、袖子《そでこ》は学校《がっこう》への道《みち》を辿《たど》った。この急激《きゅうげき》な変化《へんか》――それを知《し》ってしまえば、心配《しんぱい》もなにもなく、ありふれたことだというこの変化《へんか》を、何《なん》の故《ゆえ》であるのか、何《なん》の為《ため》であるのか、それを袖子《そでこ》は知《し》りたかった。事実上《じじ
前へ
次へ
全24ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング