》さん、どうしたの。」
最初《さいしょ》のうちこそお初《はつ》も不思議《ふしぎ》そうにしていたが、袖子《そでこ》から敷布《しきふ》を受《う》け取《と》ってみて、すぐにその意味《いみ》を読《よ》んだ。お初《はつ》は体格《たいかく》も大《おお》きく、力《ちから》もある女《おんな》であったから、袖子《そでこ》の震《ふる》えるからだへうしろから手《て》をかけて、半分《はんぶん》抱《だ》きかかえるように茶《ちゃ》の間《ま》の方《ほう》へ連《つ》れて行《い》った。その部屋《へや》の片隅《かたすみ》に袖子《そでこ》を寝《ね》かした。
「そんなに心配《しんぱい》しないでもいいんですよ。私《わたし》が好《よ》いようにしてあげるから――誰《だれ》でもあることなんだから――今日《きょう》は学校《がっこう》をお休《やす》みなさいね。」
とお初《はつ》は袖子《そでこ》の枕《まくら》もとで言《い》った。
祖母《おばあ》さんもなく、母《かあ》さんもなく、誰《だれ》も言《い》って聞《き》かせるもののないような家庭《かてい》で、生《う》まれて初《はじ》めて袖子《そでこ》の経験《けいけん》するようなことが、思《おも》
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