蕾の黄ばんで来る頃から寒さが強くなって、暖い日は起き、寒い日は倒れ萎《しお》れる有様である。驚くべきは南天だ。花瓶《かびん》の中の水は凍りつめているのに、買って挿《さ》した南天の実は赤々と垂下って葉も青く水気を失わず、活々《いきいき》と変るところが無い。
 君は牛乳の凍ったのを見たことがあるまい。淡い緑色を帯びて、乳らしい香もなくなる。ここでは鶏卵も氷る。それを割れば白味も黄身もザクザクに成っている。台処の流許《ながしもと》に流れる水は皆な凍り着く。葱《ねぎ》の根、茶滓《ちゃかす》まで凍り着く。明窓《あかりまど》へ薄日の射して来た頃、出刃包丁《でばぼうちょう》か何かで流許の氷をかんかんと打割るというは暖い国では見られない図だ。夜を越した手桶《ておけ》の水は、朝に成って見ると半分は氷だ。それを日にあて、氷を叩き落し、それから水を汲入れるという始末だ。沢庵《たくあん》も、菜漬も皆な凍って、噛《か》めばザクザク音がする。時には漬物まで湯ですすがねばならぬ。奉公人の手なぞを見れば、黒く荒れ、皮膚は裂けてところどころ紅い血が流れ、水を汲むには頭巾を冠って手袋をはめてやる。板の間へ掛けた雑巾の跡が
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