が来るから泣くなよ」
「手が冷たい……」
「ナニ、手が冷たい? そんなら早く行ってお炬燵《こた》へあたれ」
凍った娘の手を握りながら、辰さんは家の内へ連れて行った。
谷に面した狭い庭には枯々な柿の樹もあった。向うの水車も藁囲《わらがこ》いされる頃で、樋《とい》の雫《しずく》は氷の柱に成り、細谷川の水も白く凍って見える。黄ばんだ寒い日光は柿の枯枝を通して籾を積み上げた庭の内を照らして見せた。年老いた地主は白髪頭《しらがあたま》を真綿帽子で包みながら、屋《うち》の内から出て来た。南窓の外にある横木に倚凭《よりかか》って、寒そうに袖口《そでぐち》を掻合《かきあわ》せ、我と我身を抱き温めるようにして、辰さん兄弟の用意するのを待った。
「どうで御座んすなア、籾の造《こしら》え具合は」
と辰さんに言われて、地主は白い柔かい手で籾を掬《すく》って見て一粒口の中へ入れた。
「空穂《しいな》が有るねえ」と地主が言った。
「雀に食われやして、空穂でも無いでやす。一俵造えて掛けて見やしょう」
地主は掌中《てのひら》の籾をあけて、復た袖口を掻き合せた。
辰さんは弟に命じて籾を箕《み》に入れさせ、弟は
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