皆な草臥《くたび》れて、規則だけは出来たが、到頭その青年会はお流れに成って了ったことが有った。
 一方に、極く静かな心を持った人と言えば、私達の学校で植物科を受持っているT君なぞがその一人であろう。ほんとに学者らしい、そして静かな心だ。どんな場合でも、私はT君の顔色の変ったのを見たことが無い。小諸からすこし離れた西原という村から出た人だ。T君の顔を見ると私は学校中で誰に逢うよりも安心する。

     山に住む人々の三

 警察と鉄道に従事する人達は他郷からの移住者が多い。町の平和を監督する署長さんと言えば、大抵他の地方の人だ。ここの巡査の中にはでも土地から出て奉職する人なぞがあって、ポクポクと親しみのある靴の音をさせる。
 鉄道の方の人達は停車場の周囲《まわり》に全く別に世界を造っている。忍耐力の強い越後人より外に、この山の上の鉄道生活に堪《た》え得るものは無いとも言われている。大手に住む話好きな按摩《あんま》から、今の駅長のことを聞いたことが有った。この人は新橋から直江津《なおえつ》に移り、車掌を五年勤め、それから助役に七年の月日を送って来たという。同じ山の上に住んでも、こうした懸
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