る大谷君は私なぞよりずつと年の若い人だ。日露戰爭當時の記憶は、話す人よりも反つて話される私の方に濃いとは思つたが。
「いゝもんやろ、醫光寺の門やろ。」
この古い俚謠の殘つたところが、私達の指さして行つた寺の入口であつた。高くがつしりとした唐門の上には、額なぞも掛かつてゐて、雪舟の遺蹟にふさはしい。石段を上つたところにまた總門がある。ちやうど住職の留守の時で、私達は古い本堂の前手から庭づたひに僧坊の奧へ出た。苔蒸した築山と泉水との見えるところへ行つて立つた。
「これが雪舟の遺《のこ》した庭です。何かかう大きなものをつかんで、非常な力でそれを壓搾してあるやうに見えますが――」
かうした大谷君の言葉を聞くにつけても、私は行く先で逢ふ山陰地方の人達が、それ/″\住慣れた土地にあるものをよく見てゐるのに感心した。こゝへ來て見ると、靜かに隱れてゐるやうな庭の眺めが一切を忘れさせた。石の美もよく捉へてある。縱の面と横の面との兩樣の配置は、省けるだけを省いたもののやうに見える。誰もこの庭から石一つ除き去ることは出來まい。誰もまた、この庭に石一つ附け加へることも出來まい。積み重ね/\したところに潛ん
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