ゆのひに
きみにおくらん
はなもがな
姉
そでにおほへる
うるはしき
ながかほばせを
あげよかし
ながくれなゐの
かほばせに
ながるゝなみだ
われはぬぐはん
梭《をさ》の音《ね》
梭の音を聞くべき人は今いづこ
心を糸により初《そ》めて
涙ににじむ木綿《もめん》縞
やぶれし※[#「窗/心」、第3水準1−89−54]《まど》に身をなげて
暮れ行く空をながむれば
ねぐらに急ぐ村鴉《むらがらす》
連《つれ》にはなれて飛ぶ一羽
あとを慕ふてかあ/\と
かもめ
波に生れて波に死ぬ
情《なさけ》の海のかもめどり
恋の激浪《おほなみ》たちさわぎ
夢むすぶべきひまもなし
闇《くら》き潮《うしほ》の驚きて
流れて帰るわだつみの
鳥の行衛《ゆくへ》も見えわかぬ
波にうきねのかもめどり
流星
門《かど》にたち出《い》でたゞひとり
人待ち顔のさみしさに
ゆふべの空をながむれば
雲の宿りも捨てはてて
何かこひしき人の世に
流れて落つる星一つ
君と遊ばん
君と遊ばん夏の夜の
青葉の影の下すゞみ
短かき夢は結ばずも
せめてこよひは歌
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