よなりけり

   妹

こぞのこよひは
    わがともの
そでのかすみの
    はなむしろ

ひくやことのね
    たかじほを
うつしあはせし
    よなりけり

   姉

わがみぎのてに
    くらぶれば
やさしきなれが
    たなごころ

ふるればいとゞ
    やはらかに
もゆるかあつく
    おもほゆる

   妹

もゆるやいかに
    こよひはと
とひたまふこそ
    うれしけれ

しりたまはずや
    うめがかに
わがうまれてし
    はるのよを

   二 蓮花舟《れんげぶね》
[#ここから4字下げ]
しは/\もこほるゝつゆははちすはの
    うきはにのみもたまりけるかな
[#ここで字下げ終わり]

   姉

あゝはすのはな
    はすのはな
かげはみえけり
    いけみづに

ひとつのふねに
    さをさして
うきはをわけて
    こぎいでん

   妹

かぜもすゞしや
    はがくれに
そこにもしろし
    はすのはな

こゝにもあかき
    はすばなの
みづしづかなる
    いけのおも

   姉

はすを
前へ 次へ
全53ページ中35ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
島崎 藤村 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング