》から御待兼で御座ますよ」
歯医者は少許《すこし》顔を紅くして勝手口から上りました。続いて私も上りまして、炉に掛けて置いたお鍋の蓋を執って見ますと、南瓜《とうなす》は黄に煮え砕けてべとべとになりましたが、奥様の好物、早速の御茶菓子代り、小皿に盛りまして、蕗味噌《ふきみそ》と一緒に御部屋へ持って参りました。奥様は思いくずおれて男とおさしむかい、薄化粧した御顔のすこし上気《のぼ》せて耳の根元までもほんのり桜色に見える御様子の艶《あでや》かさ、南向に立廻した銀|屏風《びょうぶ》の牡丹花《ぼたん》の絵を後になすって、御物語をなさる有様は、言葉にも尽せません。伏目勝に、細く白い手を帯の間へ差込んでおいでなさいましたから、美しい御髪《おぐし》のかたちは猶《なお》よく見えました。言うに言われぬ薫《かおり》は御部屋のうちに匂い満ちておりましたのです。怒と恨とで燃えかがやいた私の目ですら、つい見恍《みと》れずにはいられません位。はっと心付いて私は御部屋を出ました。――もう奥様の御運は私の手の中に有ましたのです。
さすがに私も台所に立って考えました。
これを旦那様に申上げたら、事の破れはさてどうなる
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