て、子供を暖めた。
この長い長い寒い季節を縮こまって、あだかも土の中同様に住み暮すということは、一冬でも容易でなかった。高瀬は妻と共に春を待ち侘びた。
絶頂に達した山の上の寒さもいくらかゆるんで来た頃には、高瀬も漸《ようや》く虫のような眠から匍出《はいだ》して、復た周囲を見廻すようになった。その年の寒さには、塾でも生徒の中に一人の落伍者を出した。
遽《にわ》かに復活《いきかえ》るように暖い雨の降る日、泉は亡くなった青年の死を弔おうとして、わざわざ小県《ちいさがた》の方から汽車でやって来た。その青年は、高瀬も四年手掛けた生徒だ。泉と連立って、高瀬はその生徒の家の方へ歩いて行った。
赤坂という坂の町を下りようとする途中で、広岡学士も一緒に成った。
「なにしろ、十年来の寒さだった。我輩なぞはよく凍え死ななかったようなものだ。若い者だってこの寒さじゃ堪《たま》りませんナ」
と学士は言って、汚れた雪の上に降りそそぐ雨を眺め眺め歩いた。
漸く顕れかけた暗い土、黄ばんだ竹の林、まだ枯々とした柿、李《すもも》、その他三人の眼にある木立の幹も枝も皆な雨に濡れて、黒々と穢《きたな》い寝恍顔《ね
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