族地に葬られた。子供衆に遺して行った多くの和漢の書籍は、親戚の立会の上で、後仕末のために糴売《せりうり》に附せられた。
桜井先生の長い立派な鬚《ひげ》は目立って白くなった。毎日、高瀬は塾の方で、深い雪の積って行くような先生の鬚を眺めては、また家へ帰って来た。生命《いのち》拾いをした広岡学士がよくよく酒に懲《こ》りて、夏中奥さん任せにしてあった朝顔棚の鉢も片附け、種の仕分をする時分に成ると、高瀬の家の屋根へも、裏の畠へも、最早《もう》激しい霜が来た。凩《こがらし》も来た。土も、岩も、人の皮膚の色までも、灰色に見えて来た。日光そのものまで灰色に見える日があった。そのうちに思いがけない程の大雪がやって来た。戸を埋めた。北側の屋根には一尺ほども消えない雪が残った。鶏の声まで遠く聞えて、何となくすべてが引被《ひっかぶ》らせられたように成った。灰色の空を通じて日が南の障子へ来ると、雪は光を含んでギラギラ輝く。軒から垂れる雫《しずく》の音は、日がな一日単調な、侘《わび》しい響を伝えて来た。
冬籠《ふゆごも》りする高瀬は火鉢にかじりつき、お島は炬燵《こたつ》へ行って、そこで凍える子供の手足を暖めさ
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