を立てて、そこにマゴマゴして震えている妻の方へ行った。お島が庭口へ下りて戸を開けた時は、広岡学士と体操教師の二人が暗い屋外から舞い込むようにやって来た。
 高瀬は洋燈《ランプ》を上《あが》り端《はな》のところへ運んだ。馬場裏を一つ驚かしてくれようと言ったような学士等の紅い磊落《らいらく》な顔がその灯に映った。二人とも脚絆《きゃはん》に草履掛という服装《なり》だ。
「これ、水でも進《あ》げナ」
 と、高瀬が妻に吟附《いいつ》けた。
 お島はやや安心して、勝手口のほうから水を持って来た。学士は身体の置き処も無いほど酔っていたが、でも平素の心を失うまいとする風で、朦朧《もうろう》とした眼を※[#「※」は「めへん+登」、251−2]《みは》って、そこに居る夫婦の顔や、洋燈に映るコップの水などをよく見ようとした。
 学士のコップを取ろうとする手は震えた。お島はそれを学士の方へ押しすすめた。
「どうも失礼……今日は二人で山遊びに出掛けて……酩酊《めいてい》……奥さん、申訳がありません……」
 学士は上り框のところへ手をついて、正直な、心の好さそうな調子で、詫《わ》びるように言った。
 体操の教師は
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