が玻璃《ガラス》の内から映っていた。
 新緑の頃のことで、塾のアカシヤの葉は日にチラチラする。薮《やぶ》のように茂り重なった細い枝は見上るほど高く延びた。

 高瀬と学士とは懐古園の方へ並んで歩いて行った。学士は弓を入れた袋や、弓掛《ゆがけ》、松脂《くすね》の類《たぐい》を入れた鞄《かばん》を提げた。古い城址《じょうし》の周囲《まわり》だけに、二人が添うて行く石垣の上の桑畠も往昔《むかし》は厳《いかめ》しい屋敷のあったという跡だ。鉄道のために種々《いろいろ》に変えられた、砂や石の盛り上った地勢が二人の眼にあった。
 馬に乗った医者が二人に挨拶して通った。土地に残った旧士族の一人だ。
 学士は見送って、「あの先生も鶏に、馬に、小鳥に、朝顔――何でもやる人です。菊の頃には菊を作るし。よく何処の田舎にもああいう御医者が一人位はあるもんです。『……なアに、他の奴等《やつら》は、ありゃ医者じゃねえ、薬売だ、……とても、話せない……』なんて、エライ気焔《きえん》だ。でも面白い気象の人で、近在へでも行くと、薬代が無けりゃ畠の物でも何でも可いや、葱《ねぎ》が出来たら提げて来い位に言うものですから、百姓
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