した、大きな體格の婦人で、赤い艶々とした頬の色などが素樸な快感を與へる。一體千曲川の沿岸では女がよく働く、隨つて氣象も強い。恐らく、これは都會の婦人ばかり見慣れた君なぞの想像もつかないことだらう。私は又、斯の土地で、野蠻な感じのする女に遭遇《であ》ふこともある。Oの母には其樣な荒々しさが無い。何しろ斯の婦人は驚くべき強健な體格だ。Oの姉も勞働に慣れた女らしい手を有《も》つて居た。
私はB君や、B君の隣家の主人に誘はれて、根津村を見て廻つた。隣家の主人はB君が小學校時代からの友達であるといふ。パノラマのやうな風光は、斯の大傾斜から擅《ほしいまゝ》に望むことが出來た。遠く谷底の方に、千曲川の流れて行くのも見えた。
私達は村はづれの田圃道を通つて、ドロ柳の若葉のかげへ出た。谷川には鬼芹などの毒草が茂つて居た。小山の裾を選んで、三人とも草の上に足を投出した。そこでB君の友達は提げて來た燒酎を取出した。斯の草の上の酒盛の前を、時々若い女の連が通つた。草刈に行く人達だ。
B君の友達は思出したやうに、
「君とこゝで鐵砲|打《ぶ》ちに來て、半日飮んで居たつけナ」と言ふと、B君も同じやうに洋行以前
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