った。「この春あたりまでは文通もしましたが、それからはサッパリ手紙も来なく成りました……」
「駒形にあった額が三枚僕の家へ来てる。いずれ僕が東京へ帰ったら、あの中をどれか一枚、君の記念として送りましょう」
「何卒《どうぞ》、宜しく……」
正太は意外な音信《おとずれ》を聞いたという顔付で話した。
何気なく三吉は廊下の方へ出て見た。そこで豊世と幸作とに逢った。三吉は姉の様子が好さそうなのを悦《よろこ》んで、それを二人に話した。「母親さんも気を張って被入《いら》っしゃるからでしょうよ。私の方が反《かえ》って励まされる位です」と豊世は言った。「どうして、心《しん》はあれで弱っているんです」と彼女は附添えた。
幸作に伴われて、三吉は二階の昇降口《のぼりぐち》の人の居ないところへも行った。
「満洲の父親《おとっ》さんの方へは知らせたものでしょうか……」
「さあねえ……もし万一のことでも有ったら、その時は知らせるサ」
「私も、まあ、それに賛成だ……」
二人は欄《てすり》に倚《よ》りながらこんな立話をした。その時幸作は、豊世の一身に就いて、行末の方針に苦むということを話した。正太の看護はしても
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