兄と三吉の二人を特に寝台の側へ呼んで、母や妻の聞いているところで、種々と後事を托した。おそらく彼亡き後には、彼が家の為に尽したことに就《つ》いて、同情を寄せる人もあるであろう、と話した。豊世には、長く家に居て、母や幸作を助けるように――何一つ幸福な思もさせなかったことを気の毒に思う、とも話した。どうかすると彼の調子は制《おさ》えることの出来ないほど激昂《げっこう》したものと成って行った。それが戯曲的にすら聞えた。両手で顔を押えながら聞いていた豊世は、夫の口唇《くちびる》を霑《うるお》してやった。
「正太さん、どんな心地《こころもち》がしてるものかネ」
三吉は甥《おい》の寝台の側へ寄って尋ねた。名古屋へ着いて三日目の午前の事である。
「私は今、何事《なんに》も思いません」と正太は両手を白い掛蒲団《かけぶとん》の上へ力なげに載せて、大きく成った眼で三吉の方を見た。「唯……どうかするとこう、脆《もろ》く行って了うようなものじゃないか……そんなような気はしています……」
幾干《いくばく》もない自己の生命を、正太は自覚するもののように見えた。その日は沈着《おちつ》いて、言うことも平常《い
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