《たちのき》を迫るとか、煩《うるさ》いことの多い中に、最早家の周囲《まわり》には草の芽を見るように成った。
やがて豊世はこの惜しい世帯を畳まなければ成らない人であった。正太が放擲《うっちゃらか》して置いて行った諸方《ほうぼう》の遊び場所からは、あそこの茶屋の女中、ここの待合の内儀《おかみ》、と言って、しばしば豊世を苦めに来た。彼女はそういう借金の言訳ばかりにも、疲れた。そればかりではない、月々の生活を支《ささ》える名古屋からの送金は殆《ほと》んど絶えて了《しま》った……家賃も多く滞った……老婆に払うべき給料さえも借に成った……
家具を売払って、一旦《いったん》仕末を付けよう、こう考えながら豊世は家の内を歩いて見た。二度とこうした世帯が持てるであろうか、自ら問い自ら答えて、幾度《いくたび》か彼女は家の形を崩すことを躊躇《ちゅうちょ》した。
勝手の流許《ながしもと》には、老婆が蹲踞《しゃが》んで、ユックリユックリ働いていた。豊世は板の間に立って眺《なが》めた。ゴチャゴチャした勝手道具はこの奉公人に与えようと考えていた。
「真実《ほんと》にねえ、これまでに丹精するのは容易じゃなかった」
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