も、幸作夫婦も、家を捨てて行った父も――


「森彦叔父さんを訪ねて見ようじゃ有りませんか。私の病気のことは未だ誰にも言わずに有ります。あの叔父さんにも知らせて有りません。母親さんは無論のこと。唯、貴方《あなた》に御話するだけです。豊世は……これはまあ看護をしてくれる人ですから……」
 こんなことを言って、翌日正太は三吉を誘った。彼は胸に病のある人とも見えないほど爽快《さわやか》な声で話す時もあった。活気のある甥の様子に、三吉もやや安心して、一緒に森彦の宿を訪ねることにした。
「森彦叔父さんも奮闘していますぜ」
 と正太は箱梯子を降りかけた時に言った。
 午後に成って、正太は名古屋女の観察、音曲、家屋の構造なぞの話を叔父に聞かせながら帰って来た。暖簾《のれん》を潜《くぐ》ると、茶室のように静かな家の内には読経《どきょう》する若主人の声が聞える。それを聞きながら、二人は表二階の方へ上って行った。
 豊世は行末のことまでも思うという風で、二人の傍へ来た。
「豊世さん、貴方はどうする人ですか」と三吉が尋ねた。「未だここに居る人ですか」
「私も困って了いますわ。こうして置いても行かれませんし、
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