白々する頃には、豊世も床を離れて、何かゴトゴト言わせていた。お種は雪洞《ぼんぼり》を持って新座敷の方へ行った。
「豊世、お前も行って了うかい」
「母親さん達は昨夜遅くまで話していらっしゃいましたネ」
「碌に寝すか」
「何だかぼそぼそぼそぼそ声がしてましたが、そのうちに私は寝て了いました」
「豊世――俺はツマランよ」
お仙は未だ眼を覚さなかった。思わずお種は娘の枕許《まくらもと》で泣いた。
三吉と一緒に朝茶を飲む頃のお種は、前の晩とは別の人のようであった。
「折角来てくれたのに」とお種はサッパリした調子で、「今度はイヤな話ばかり聞かせましたネ」
「三晩とも話し続けだ」
「いや、どうしてオオヤカマシ」
姉弟は顔を見合せて笑った。
豊世も仕度が出来た。やがて出発の時が来た。炉辺には、お種をはじめ、お仙、幸作夫婦、薬方の衆まで集って、一緒に別離《わかれ》の茶を飲んだ。
三吉達を見送ろうとして、お島とお仙の二人は町はずれまで随いて来た。
こういう道中をあまりしたことの無い豊世は、三吉と一緒に余儀なく歩かせられた。旧《ふる》い木曾路は破壊される最中であった。時々、岩石の爆裂する音が起っ
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