た。大きな石の塊が可恐《おそろ》しい響をさせて、高い崖《がけ》の上から紅葉した谷底の方へゴロゴロ転《ころ》がり落ちて行った。
「女が、独りでなんぞ、とても通られる時じゃ有りませんネ」
 と豊世は叔父に随いて歩きながら言った。
 都会風な豊世の風俗は、途中に仕事をしている労働者の眼を引き易《やす》かった。どうかすると、十人も二十人も「ツルハシ」を手にした工夫の群が集って、石や土を運ぶことを休《や》めて、道を塞《ふさ》いでいた。
 大きな森林は三吉の眼前《めのまえ》に展《ひら》けて来た。路傍《みちばた》には自然と足を留めさせるような休茶屋がある。樹木の間から、木曾川の流れて行くのが見える。そういうところへ寄って、三吉が豊世を休ませようとすると、かみさんが茶を運んで来て、「奥さんは、今日は何処《どちら》から?」などと聞く。豊世はハニカンでもいなかった。自分のことは言わずに、三吉の方を指して、
「あれは、私の叔父さんですよ」
 こう笑いながら答える。この笑いが反《かえ》って休茶屋のかみさんを戯れるように思わせた。復た二人は笑って出掛けた。
 停車場の新設された駅へ着いたは、日暮に近かった。豊世
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