菓子折を取出した。
「どれ、皆なで偽薬《にせぐすり》の菓子をやらまいか」
と幸作は笑って、それを客にもすすめ、自分でも食った。
お種は若い嫁の方を鋭く見て、
「お島は甘いものが好きだに、沢山《たんと》食べろや――」
「頂いております」とお島は夫の傍に居て。
「オオ、あの嬉しそうな顔をして食べることは――」
姑は無理に笑おうとしていた。
長くも若夫婦は茶を飲んでいなかった。二人が店の方へ行った後で、三吉は姉に向って、
「姉さんの顔は、どうしてそんなにコワく成りましたかネ」
「そうか――俺の顔はコワいか」とお種は自分の眉《まゆ》を和《やわら》げるように撫《な》でながら、「年をとると、女でも顔がコワく成るで……どうかして俺は平静《たいら》な心を持つように、持つように、と思って……こうして毎日自分の眉を撫でるわい」
「どうも貴方の調子は皮肉だ。あんまり種々な目に遭遇《であ》って、苦しんだものだから、自然と姉さんはそう成ったんでしょう。目下のものはヤリキれませんぜ」
「そんなに俺は皮肉に聞えるか」
「聞えるかッて――『オオ、あの嬉しそうな顔をして食べることは』――あんなことを言われちゃ、
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