し振の炉辺に居て、幸作を相手に沢田という潔癖な老人のあったことなぞを尋ねた。あの忠寛の旧《ふる》い友達で、よくこの家へやって来た老人は疾《とう》に亡くなっていた。
ふと、三吉は耳を澄ました。玄関の方へ寄った薬の看板のかげでは、お島の忍び泣するけはいがした。
「そうかナア」という眼付をしながら、三吉は炉辺からお仙のボンヤリ立っている小部屋を通って、姉の居る方へ来た。
奥座敷の中央《まんなか》には、正太が若い時に手ずから張って漆を抹《は》いたという大きな一閑張《いっかんばり》の机が置いてある。その前に、お種は留守を預ったという顔付で、先代から伝った古い掛物を後にして、達雄の坐るところに自分で坐っていた。豊世は茶道具を出して、それを机の上に運んだ。
三吉はこの座敷ばかりでなく、納戸《なんど》の方だの、新座敷の方だのを見廻した。改革以来、沢山な道具も減った。たださえ広い家が余計に広く見えた。
「でも、思いの外|種々《いろいろ》な道具が残ってるじゃ有りませんか」と彼は言って見た。
「皆なの丹精で、これまでに為たわい。旦那が出て了った後で、私がお前さんの家から帰って来た時なぞは……眼も当
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