で自分々々の布巾《ふきん》で綺麗に拭くことも――すべて、この炉辺の光景《さま》は達雄の正座に着いた頃と変らなかった。しかし、席の末にかしこまって食う薬方の番頭も、手代も、最早昔のような主従の関係では無かった。皆な月給を取る為に通って来た。
「御馳走」
と以前の大番頭嘉助の忰《せがれ》が面白くないような顔をして膳を離れた。この人は幸作と同じに年季を勤めた番頭である。幸作は自分の席から、不平らしい番頭の後姿を見送って、「為《す》るだけのことを為れば、それで可いじゃないか」という眼付をした。
賑《にぎや》かな笑声も起らなかった。お種は見るもの聞くもの気に入らない風で、嘆息するように家の内を見廻した。その朝、彼女は箸も執《と》らなかった。三吉を款待《もてな》すばかりに坐っていた。豊世やお仙は言葉少く食った。二人は飯の茶椀で茶を飲みながらも、皆なの顔を見比べた。
「母親さん、召上りませんか」
とお島は姑《しゅうとめ》の方を見て、オズオズとした調子で言った。
「俺は牛乳を飲んだばかりだで……また後で食べる」
とお種は答えたが、ぷいと席を立って、奥座敷の方へ行って了った。
食後に、三吉は久
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